中学受験理科 「中和計算」が苦手な受験生へ 考え方のポイントを解説①

理科の計算問題を苦手としている受験生は多いと思われます。長女も電気分野、力学分野、そしてこの中和計算などの化学分野においてもその兆候が現れ始めています。

 

中和反応を題材とした問題は、暗記問題と計算問題に大別されます。基本となる塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和反応で暗記すべきことは少なく、多くの受験生が得点できることでしょう。よって、中和計算に受験生の苦手が集中します。中和計算も初歩的なもの(例えば、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液が○:△で反応するから完全中和点はここだ!みたいなもの)は多くの受験生が解けます。

 

しかし、例えば「塩酸を10倍に薄めたものを10mL別の試験管に移して、これに水酸化ナトリウム水溶液を加える」といった内容になると何が起こっているのか、何故このような操作をするのか分からなくなる受験生が急に増えてきます。これは、中和反応以前に化学反応の基本が分かっていないから生じることだと思っています。

 

小学生に中和反応を理解させるのは実は難しい

中和という化学反応を理解するためには、高校化学の知識が必要となります。例として、中和の化学反応式、イオン化傾向、電気陰性度、物質量の概念などが挙げられます。

 

そもそも小学生は「元素周期表」すら知らない状態で化学を学んでいくわけです。そして、HCl + NaOH ⇨ NaCl + H2O の化学反応式で表されるように、塩酸と水酸化ナトリウムが1:1で反応することも知りません。そうなってくると、小学生が解けるような中和反応の問題作成は、「塩酸○mLと水酸化ナトリウム水溶液△mLを混ぜるとリトマス紙の色が〜〜」という形にせざるを得ないと思われます。

 

この記事を書こうとして、検索していると面白い論文を見つけました。「高校生の物質量とモルの個別的概念形成」というタイトルです。この論文を読んで、高校時代を思い出しました。私が高校で化学を習い始めた頃、化学というのはひたすら計算が面倒な教科という印象しかありませんでした。いくら計算しても答えが合わないことも多々ありました。そのような中、ある日何かのきっかけで物質量の概念が理解できたことで、急に化学という教科への理解が飛躍的に向上したのです。この論文にあるように私も「モルアレルギー」だったのかもしれません。

 

 

化学反応はいくつかの部品を組み合わせて特定の製品を作るようなもの

「中学受験 中和」というキーワードで検索すれば、辻義夫先生の「カレーライスの法則」が出てきます。小学生に中和反応を理解させるのに、多くの小学生の好きなカレーライスを題材にしているのは上手い言い方だと思います。しかし、本質的には不適切な表現かもしれません。なぜなら、ご飯にかけるカレールウは多くても少なくても、一応はカレーライスとして成立するからです。「カレーライスの法則」を聞いて、「なんでカレールウ2杯とご飯1杯でなければならないんだろう?カレールウ1杯とご飯1杯でもカレーライスじゃん。」と思った子もいるのではないでしょうか?

 

私は化学反応とは「いくつかの部品を組み合わせて、ある製品を作るようなもの」だと考えています。これは中和反応に限った話ではありません。「製品」を必要な個数作る上では部品が過不足なく必要となります。つまり、中和反応を考えていく上では、塩酸○mLと水酸化ナトリウム水溶液△mLが完全中和したということは、中和に必要な塩酸という部品の数と水酸化ナトリウムという部品の数が一致したということに他なりません。

 

この考え方は非常に大切なのですが、これを取り入れて問題を解こうとすると計算が余分に必要となります。有効だと思うのは、液を薄めたり濃くしたりするタイプの問題です。

 

液を薄めたり濃くしたりするタイプの問題の考え方

マナビー第2単元のすすんだ問題 大問9を参考に考え方を説明します。問題を要約すると以下の内容です。

うすい塩酸20㎤と水酸化ナトリウム水溶液10㎤が完全中和し、食塩が1.2gできる。

実験に使った水酸化ナトリウム水溶液10㎤に水10㎤を加え2倍に薄め、うすい塩酸20㎤にこの水酸化ナトリウム水溶液15㎤を加える実験を行う。

(1)混合液のリトマス紙の色の変化は?

(2)混合液を蒸発させたときに何gの固体が残るか?

 

塩酸20㎤と水酸化ナトリウム水溶液10㎤が完全中和ということは、この液に含まれる塩酸の部品(分子)と水酸化ナトリウムの部品(分子)の数は等しいことを意味します。以下では「分子」という言葉を用います。

実際の分子数は莫大な数ですが、便宜上、その数を20と10の倍数である200(個)とします。20個としなかったのは、この液をさらに薄めていくような問題があった場合に小数点が出る可能性があり、分子数が小数点になるのは好ましくないので、多少大きめな数字としています(計算上は小数点でも問題ありません)。

 

うすい塩酸20㎤に200個の塩化水素分子、水酸化ナトリウム水溶液10㎤に200個の水酸化ナトリウム分子を含んでいることになります。混合すると食塩200個ができます。この質量が1.2ということです。

この水酸化ナトリウム水溶液10㎤に水10㎤を加え2倍に薄めても、水酸化ナトリウム分子の数は変わりません。つまり、水酸化ナトリウム水溶液20㎤に200個の水酸化ナトリウム分子を含んでいることになります。

この水酸化ナトリウム水溶液15㎤は、20 : 200 = 15 : xより

x = 150個の水酸化ナトリウム分子を含みます。

 

では、うすい塩酸20㎤とこの薄めた水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると、塩酸分子200個に対して、水酸化ナトリウム分子は150個となるので、150個の食塩ができ、塩酸が50個余ることになります。つまり酸性です。

 

200個の食塩の質量が1.2gだったので、150個では200 : 1.2 = 150 : x

よって、x = 0.9 g となります。

 

次回は実際の入試問題を用いて、解説を行います。

最新情報をチェックしよう!