【本の紹介:アフターデジタル その②】すべてがオンラインになった世界のビジネスの在り方

 

今回も書籍「アフターデジタル」を紹介していきます。

アフターデジタルって何?と思われる方は前回記事、【本の紹介:アフターデジタル その①】すべてがオンラインになった世界のビジネスの在り方をご覧ください。

ジーマクレジットは中国人の行動を変える

ジーマクレジット(芝麻信用)とはアリペイを提供しているアリババ傘下の金融会社「アント・ファイナンシャル」が2015年に開始したサービスです。アリババとは日本でいうところのアマゾンのような企業です。

アリペイはウィーチャットペイと並んで中国で広く用いられているモバイル決済です。アリペイではショッピングの代金、公共料金、さらには税金までアプリで支払うことができ、その支払いデータを収集しています。アリペイの利用履歴を中心に、提携サービスの利用状況やアリペイ上の友人も含めた膨大なデータを集め、それをAIで解析することでユーザの信用スコアを算出しています。

ジーマクレジットと呼ばれるこのスコアは「個人特性」、「支払い能力」、「返済履歴」、「人脈」、「素行」で評価され、350~950点でスコア化されています。ジーマクレジットの利用者は5億2000万人にも及び、信頼性の高いスコアと言われています。自身の職業や出身大学を登録すると点数が上がるため、社会的信用度を示すスコアでもあります。

スコアを上げるメリットは、アリババグループや提携企業のサービスを利用する際に特典を受けられるほか、ビザの取得期間が早くなる、賃貸契約しやすくなる、融資を受けやすくなる、婚活しやすくなるなど様々です。また、中国では農村出身と都市部出身では、戸籍上生まれながらにして権利が違うそうです。農村出身者が都市に住もうとすると社会保障、生活保障がなく、医療や年金がまともに受けられず、家を借りるのも大変な状況とのことですが、ジーマクレジットの導入で格差が解消される可能性が出てきました(中国政府は2020年までにこの格差をなくすと発表している)。

企業はジーマクレジットを与信審査の一環として利用しています。これにより余計な手続きが減り、ユーザー、企業ともに大きなメリットがあります。

著者の主観として、信用スコアが浸透してから中国人のマナーが格段に良くなったようです。中国はもともと性悪説で他人を信用しない、損をしたら負けという考え方があるとのこと。信用スコアの登場により「善行を積むと評価してもらえる」と考えるようになり、これまで文化や習慣で変えられなかったものが、データやIT技術で変わろうとしていると著者は述べています。

 

最近you tubeを視聴していると「Rerep(リリップ)」というサービスの広告が流れるようになりました。横浜DeNAベイスターズの親会社である株式会社ディー・エヌ・エーが行っている与信サービスです。

これまでの社会では、経歴や肩書、収入など「現在のステータス」で信用が決められてきました。

(中略)人間関係の信用と同じように「誰もが毎日の中で信用を育てていける」新しい信用のカタチをつくりたい。そんな想いから生まれたのが、与信の次世代パートナー「リリップ」です。アプリひとつでカードローンの融資体験をポジティブに変え、一人ひとりの可能性を応援していきます。

~Rerep(リリップ) ホームページより~

 

アプリに「朝起きる予定時間を登録する」、「趣味を登録する」、「運動時間を登録する」、「最近購入した買い物情報を登録する」など、リリップで提示されるミッションをクリアすることで信用スコアがたまっていきます。信用スコアを積み上げると完済までの金額が安くなるという仕組みです。

実際にこのサービスを利用していないので詳細は分かりませんが、ホームページを見る限りではミッションを自身で登録したり、クリアする必要があり、ジーマクレジットのように日々の購買行動などが自動で分析され、信用スコアに反映されるわけでなないという印象を受けました。

アリババは中国の決済システムを握っているため、膨大な量の購買データがあります。リリップが日本で規模の大きいどこかの決済システムと提携すれば、ジーマクレジットのようなサービスが展開できるようになるのかもしれません。

 

本書で紹介されている中国企業、サービス

タクシー配車アプリ「ディディ(滴滴)」

ディディはユーザー満足度をデータで取得して計測しています。配車リクエストがあった場合にすぐリアクションしたか、ユーザーをどれくらい待たせたかなどがデータで残ります。

運転については、ドライバーのアプリに最短距離と時間が表示されますが、制限時間に間に合うために無茶苦茶な運転にならないよう、GPSと加速度センサーのデータから安全運転できているかどうかが測定されます。

「安全に素早く目的地に到着すること」が最も評価されます。この点に関わるポイントのみデータを取得し、評価される仕組みとなっているため、ドライバーは善行を積み、ユーザーからも評価される訳です。

 

平安保険グループ

2018年末の中国株式時価総額ランキングで3位の企業です。保険事業からスタートし、現在では医療、移動、娯楽、住宅、金融など様々なサービスを手掛ける会社です。

特に「平安グッドドクターアプリ」というサービスで成功しています。

中国では医師によって医療サービスの質に大きな差があることが知られています。人気の総合病院では整理券を配布されてから診察まで1週間待ちという状況もあるようです。

平安グッドドクターアプリの機能は大きく3つあり、1つ目はアプリ上で無料で開業医に相談できる機能です。受診勧奨された場合には、2つめの機能であるアプリの病院予約機能を利用します。病院を選ぶだけでなく、その病院に所属する医師のプロフィール(卒業大学、論文歴など)を閲覧でき、診てもらいたい医師を選ぶことができます。

3つめの機能は「歩けばポイントが貯まるシステム」です。換金するためには1日の終わりにアプリを開いて手続きをする必要があります。利用者はこれが習慣化されており、その際に広告を載せることでブランドイメージを作っています。

アプリの機能を顧客が利用することで、顧客の行動データが集まります。例えば、「Aさんがガンの情報を調べ、アプリを使って無料の医療相談を予約、その後病院で検査を予約した」という情報が得られます。平安保険の営業マンはこの情報を元に顧客に接し、適切なタイミングで、ニーズの高い商品を紹介できるわけです。このアプリは「すぐに売上につなげるのではなく、平安保険を好きになってもらい、ずっと寄り添うことを重視する」という企業戦略のもとで開発されたということです。

 

アリババによるネットスーパー「フーマー」

フーマーは2016年から展開されているアリババが運営するEC機能(電子商取引)を持った生鮮食品スーパーマーケットです。通常、生鮮食品をインターネットで購入するケースは日本ではほとんどないと思われます。フーマーはオンラインとオフラインの融合が最も進んだ事例のひとつと言われています。

フーマーでオンライン注文すると店舗から3km圏内であれば、30分以内に配送してもらえます。各店員は専用端末を持っており、注文から3分以内に配送用のバッグに商品を詰め込みます。詰め込まれた商品は壁から天井に設置されたベルトコンベアーで注文から5分以内に配送センターに届けられます。残りの25分間で配送センターに待機する多くのドライバーが注文先まで届けます。

実店舗においては生簀に泳いでる新鮮な魚をその場で調理してもらえたり、流れるベルトコンベアーを眺めたりとエンターテインメント性のある場所です。フーマーはネットスーパーでもあり、配送センターでもあり、生鮮食品の実践販売の場でもあり、レストランでもあるのです。フーマーは「その時一番便利な方法で選びたい」という、顧客の利便性を最大限に活かせるスーパーマーケットと言えます。

 

アフターデジタル社会での産業構造ヒエラルキー

従来の産業構造はモノを売ってもデータは残らないので「よく売れるモノ」を作ることが重要でした。そのため、メーカー主導のものづくりがトップであり、小売店がいかに売るかという産業構造でした。

市場が成熟し、アフターデジタル的な考え方が浸透してくると、顧客は利便性の高いサービスを好み、その企業・サービスに時間やお金を使うようになります。本書で私が最も重要と思われる内容を以下に引用します。

「データのやり取り」が新たなインフラとなり、最もお金を生み出しやすい「購買データ」をより多く持ち、それを顧客IDとつなげられているプラットフォーマーがトップに君臨する図式が生まれます。GAFAもそのような動きを見せていますが、新しい産業構造において最上位に来るのは決済を握ったプラットフォーマーになります。その下に来るのが、業界ごとに体験型で価値提供しているサービサーで、その下にメーカーが位置付けられます。

 

GAFA(ガーファ)とはアメリカを代表する企業であるG:グーグル、A:アップル、F:フェイスブック、A:アマゾンを指します。

決済プラットフォーマーは利便性、資本力など複数の条件を兼ね備えなければ、ユーザーからそれとは認めてもらえません。

日本においては、スマホ決済の覇権をPayPay、メルペイ、楽天ペイ、d払い、auPay、LinePayなど多くのサービスで争っています。PayPayが何百億円もの還元キャンペーンを行ったことはまだ記憶に新しいと思います。そんなに先行投資を行って大丈夫なの??と思った人も多いのではないかと思います。

それだけ莫大な金額を投入してでも決済プラットフォーマーとしての地位を確立することは、アフターデジタル社会でビジネスを行う上では意味のあることだと言えます。

 

アフターデジタルを読んで

最近読んだ本の中では最も面白かったです。

今の日本のビジネスに欠けている考え方だと思います。私たちがこれからの時代にビジネスを行う上では必須の知識であり、将来を担う子供たちが職業選択をする過程で意識しておくべき知識です。

ここに書ききれなかったことは山ほどありますので、是非一読していただければと思います。

私の好きなYouTuberのアバタローさんが本書について分かりやすく解説しているので、もし良ければご覧下さい。

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